知財攻略論

今回は、難解とされる知的財産法の攻略論をUPさせて頂きました。

1冊本を利用した講義も実施しますので、ご期待下さい。

 

☑ポイント
□特許法と著作権法は全く視点が異なる
□特許法は処理手順に従うこと
  典型論点から出題される(判例百選、過去問n)
  論証の記憶が重要
  要件事実的思考
□著作権法は整理する科目
  複数の権利を整理して書くこと
  応用論点が出題されることが多い
  条文の読み込みの必要性
 

<特許法視点>
①訴訟物を意識する
 →審決取消訴訟,民事訴訟
②典型論点のマスター
 →条文構造の把握
③あてはめの重要性

<特許法要件事実的思考>
■侵害訴訟の請求原因事実
 ①特許権の存在
 ②特許発明の技術的範囲
 ③侵害行為の存在
■抗弁
 ①クレームの解釈についての主張
 ②先使用に基づく通常実施権(79条)
 ③特許無効の抗弁
 ④特許実施権原(77条以下)
 ⑤特許権の消尽
 ⑥試験研究のための実施(69条1項)
 ⑦消滅時効,無過失

(著作権法)

<著作権法の視点>
①訴訟物を意識する
②問題文の整理
当事者関係図の作成
③条文の引用を重視する
④判例の論証の確認
⑤コンパクトなあてはめ

<著作権法要件事実的思考>
■請求原因事実
①権利の存在
→著作物,著作者,著作権
②侵害行為の存在
■抗弁
①自由使用(102条1項,30条)
②使用権原,同意
③権利の譲渡
④保護期間の経過(51条1項)
⑤権利の放棄
⑥消尽
⑦消滅時効,無過失
⑧著作者の死亡

<著作権法全体構造整理>
①著作物
・言語
・音楽
・舞踊又は無言劇
・美術
・建築
・図形
・映画
・写真
・プログラム
・二次的著作物
・編集著作物
・データベース
②著作者
・基本
・共同著作
・職務著作
・映画の著作者
③人格権
・公表権
・氏名表示権
・同一性保持権
④著作権
・複製権
・上演権・演奏権
・上映権
・公衆送信権
・公の伝達権
・口述権
・展示権
・頒布権
・譲渡権
・貸与権
・翻訳権・翻案権
・二次的著作物の利用に関する原著作者の権利
⑤著作権の制限
☑日常の学習
☒予備校本での学習
☒答練の受講
☒技術的なことは気にしない
☑採点実感
 本問は,均等侵害の成否,消尽の成否,特許法第101条第2号の間接侵害の
成否,同号の間接侵害に基づく損害賠償請求と同法第102条第2項の関係と
いう,同法の重要な論点についての理解力を問う問題である。

 採点に当たっては,設例から論点を的確に抽出し,各論点について,裁判例が
あるものについてはその解釈を念頭に置きつつ,解釈論を説得的に展開し,事案
に適切に当てはめられているか否かに応じて,優秀度を判定した。
本問は,職務著作の成否,著作権の消尽の成否,著作権が全部譲渡された場合
における同一性保持権の効力を問うものであり,著作権法の基本的な規律と著
名な論点の理解を問う一方,やや発展的な論点を含む事案において,問題の構図
を整理した上で妥当な法解釈を導く能力を試す設問も含んでいる。
採点に当たっては,関連条文を的確に拾い上げ,設問の事案に当てはめること
ができているか否か,事案に含まれる論点を網羅的に抽出し,当該論点に係る裁
判例・ 学説の理解を前提とした法解釈を展開することができているか否か,法
制度の趣旨・目的に遡って問題の所在を特定し,その解決のための適切な法解釈
を提示し,的確に事案に当てはめることができているか否かに応じて,優秀度を
判定した。

 本年は,昨年同様,重要な条文及び基本的な論点に関する知識,論理的思考力
及び論述力を問うとともに,問題文に記載された事実から関連する事実を抽出
し,事案に則した結論を導く力を 問うような出題を心掛けた。
 しかし,重要な条文であるにもかかわらずその規律内容の理解がおぼつかな
い答案,具体的事案の中から問題となり得る論点を的確に抽出できず,特に問題
とはならない別の論点について冗長な論述を行い,結果としてバランスを欠い
た答案,なぜ当該論点が問題となるのかについて言及することなく,ただ論点と
して論ずるかのような答案,明文の規定があるにもかかわらず条文を指摘しな
い答案や条文の指摘が不十分,不正確な答案,判例や判断基準を示した著名な裁
判例があるにもかかわらず,それに言及しない答案やその理解が不十分である
答案,理論的に結論を導く能力が欠けている答案が目についた。
 したがって,今後の法科大学院教育には,引き続き,条文の重要性を意識させ
て,こまめに引用する習慣を身に付けさせる教育,基本的な論点を偏りなく学ぶ
とともに,各論点における問題の所在をきちんと掘り下げることにも力点をお
いた教育を行うことが期待される。
また,飽くまで法科大学院は実務家を養成する教育機関なのであるから,重要
と目される判例や裁判例,少なくとも最高裁と知財高裁大合議の判断について
は,先例性の観点から一定の重点を置いた教育が行 われることが望ましい。
さらに具体的な事案の中から問題となる論点を的確に抽出し,それと関連す
る事実を拾い上げて,法的解決策をバランスよく論述する能力を養う教育が行
われることが 望まれる。

 本採点実感が今後の法科大学院教育において真にいかされたものとなり,優
れた水準の答案が少しでも増加することを願ってやまない。

 

 

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