ファミリーコンピュータを愛す・その32
「ファミコン探偵倶楽部〜うしろに立つ少女〜」はゲーム的には非常にとっつきやすく、難易度も後編最初の3Dシーン以外であればほとんど詰まる事なく進める。なので難易度的には若干の物足りなさもあるのであるが、その分恐怖の演出が非常に秀逸であり、それはそれはプレイ中に後ろを何度も振り返ったものである。特に、真犯人が現れるシーンなどは鳥肌ものだ。
そんな訳でこのシリーズのファンになった私であるが、早速前作「消えた後継者」もプレイして行った。こちらは続編よりも若干まだシステムが洗練されておらず、コマンド総当たり的な面も多いため続編ほどすんなり進む事は出来なかった。まあ一作目だから仕方ないかもしれないが、ただそれでも後編の盛り上がりは見事なものがあり、恐怖の演出はもちろんのこと、主人公の過去が明らかになるシーンや、そして大どんでん返しとも言える真犯人の登場などは度肝を抜かれたものだった。
そして、夏休みを迎える頃には各種ハードで話題作が発売されて行ったが、その中でも最も評判を呼んだのがかの糸井重里氏がプロデュースした「MOTHER」である。正直、糸井重里氏が何者なのかも正直良く分かっていなかったのであるが、ファミマガ、ファミ通のいずれも大プッシュしていたものだった。ただ、正直前述のようにファミコンユーザーにとっては糸井氏は謎の存在であったので、自分的には多分に任天堂の圧力があったのでは、としか思えなかった。
それはまあ当然の話であるのだが、そんな大プッシュの割にはファミマガ読者の期待値はさほど高くなかった。正直、せいぜい5%前後ぐらいを推移していたと思う。しかし、そんな世間の期待とは裏腹に自分的には気になるゲームであり、これは面白いはずと思った私は発売日に購入した。結局、他に対抗馬がなかった事もあったか、ちょうど夏休みというタイミングが合ったのかどうかは分からないが、セールス自体はいずれのランキングでも1位を獲得したと思う。
なので、任天堂と糸井氏的には面目を保った感じであったのだが、ファミ通のクロスレビューでTACOX氏が語っていたように、最初のうちは「こんなもんかな」とあまり熱中は出来なかった。BGMは確かに良かったが、前半の敵キャラはコミカルなものが多く、それに倣って戦闘のBGMも緊張感に欠けるものだったため、それで「あれ?」と思ってしまったのかも知れない。
しかし、それでもロイドを仲間にしたあたりから物語は盛り上がっていき、そこから変化するフィールド曲の美しさもそれに拍車をかけて行った。そして、何よりテディが倒れた後と、アナと2人きりになった時の展開である。大体18日ぐらいでエンディングにたどり着いたのであるが、「エンディングまで泣くんじゃない」のコピーのようにはいかず、エンディングを迎えても泣く事はなかった。
おそらく、当時はまだ子供すぎたので感受性がなかったのだろう。誰かが言っていたが、このゲームは大人がプレイして初めて感動するものだと思う。あいにく、バックアップが全く消えなかった事もあって、その後2度と最初からプレイする事はなかったが、今プレイすればきっと感動する事だろう。前述のTACOXのように、このゲームはプレイ中は「いまいちだな」と思う事が少なくないのであるが、終わってみれば「良かったな」ときっと誰もが思う事だろう。ゲーマーなら一度はプレイすべき名作である。
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