「ゲームセンター」

皆さんご存知「スーパマリオブラザーズ」が発売されて35年余り。

一大旋風を巻き起こしたファミコンに始まり、

今までに沢山のゲーム機器が発売されている。

 

最新のゲームを調べてみると驚くべきものがあった。

いわゆる「VR」(バーチャル・リアリティ)。

どでかいゴーグルのようなものを顔につけ、視界そのものがゲームの世界になる。

その世界では、お化けも断崖絶壁もなんでもござれ。

あまりのリアルさに倒れ込んでしまう人もいるという。

「ゲーム機を操作する時代」から「ゲーム機に操作される時代」に変わりつつあるのだろう。

 

僕が十代の頃、ゲームセンターが大流行りしていた。

大きな画面で動き回るキャラクター達を使い、非現実の冒険に出る。

特に僕が好きだったのが格闘ゲーム。

強い相手を自分の技で倒していく快感は、子供の僕を魅了した。

 

ゲームセンター界でも偉人というのが存在する。

いわゆる憧れのお兄ちゃん。

どんなゲームでも一早く習得し、

どんな対戦相手もバッタバッタと倒していく様は正に“ゲームマスター”。

高校生だったのだろう、学ランの前ボタンを開け足を組み、

叩くボタンさばきは可憐で無駄のない動きに見えた。

その背中越しで技を盗み、影で練習したものだ。

 

しかしひょんな出来事がきっかけで、僕はゲームに一切興味を失ってしまった。

なんて事はない、とある昼下がりのこと。

いつものようにゲームに精を出し、

自分の技を「どうだ!」と見せつけゲームクリアした時に辺りを見渡した。

そこにはゲームの騒音の中、取り残された自分がいた。

ゲームセンターの自動ドアの向こう、流れる人波、路地を燦々と照りつける太陽。

静寂が僕の心を包んだ。

 

「あれ?俺ってゲームセンターに来た時の自分と何も変わってない・・」

そう、ゲームでどんな偉業を成し遂げても、リアルな世界の自分に成長はない。

「俺は何をやっていたんだろう?」という冷たいほどのリアルが、僕の前に突きつけられた瞬間だった。

 

その日以来、ゲームセンターとは疎遠になった。

一体なんだったのか未だに分からずじまいだけれど、それが僕の“リアル世界”で生き始めたきっかけとなった。

 

恋をし、勉強をし、ギターを握り・・。

モンスターや空を飛ぶ戦闘機から、

リアルな人間とのコミュニケーションを選び歩み始めたわけだ。

CMでは未だ沢山の最新ゲームの宣伝が流れている。

 

「人生も一つのゲームに過ぎない」

そう言われてしまえば元も子もないけれど、どうせ握るならゲームコントローラーよりも人の手の温もりがいい。

傷つきながら不器用に繰り広げられる、リアルな人間のゲームがいい。

 

 

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