倒産法攻略の視点

今回は、倒産法の攻略の視点を記載させて頂きます。

 

(視点)

☑民法・民訴法の応用であることを意識すること

 債権者平等の原則が出発点

☑概念把握の重要性→民訴的

☑条文要件の確認→民法的

☑実体法と手続法の視点

 前者は百選、後者は条文の読み込み(百選末尾参照)

 

(破産法)

☑実体法は高得点を狙うこと

 百選からの出題が多い

 制度趣旨からの論述を心掛ける

☑手続法は差がつく

 日常的な条文の素読→幅広く

☑予想が的中する

 過去問頻出論点の存在

 

(民事再生法)

☑単独では難しい

 破産法からスタートし、対比する

☑手続条文の把握

 条文の存在意義を確認する

 

(素材)

☑条文、基本書

☑過去問

☑判例百選

 

(採点実感)

 第1問は,株式会社が破産手続開始の決定を受けた場合の具体的事例を基に,双方未履行状態にある請負契約が破産管財人により解除された場合における既払の請負代金及び未払の請負代金債権の取扱いについて(設問1),支払不能後又は支払停止後に預金払戻債務が負担された場合に,銀行が有する貸金 返還請求権を自働債権とする相殺の可否について(設問2及び3)の理解を問うものである。

採点の主眼は,関係条文の規律内容及び制度趣旨を正しく理解できているかどうかを確認するとともに,設問において与えられた事実関係を分析し,解答に必要な範囲で抽出して当てはめを行った上で,的確な結論を導くことができているかどうかに置かれている。

論点ごとの具体的な評価水準等については,後記3 ⑴に記載のとおりであるが,全体を通して,条文から正確に要件を拾い出し,設問における事実関係に 丁寧に当てはめていく姿勢が重要である。

 例えば,B銀行が有する貸金返還請求権が破産債権に当たることや,F商店による振込が支払不能又は支払停止後の債務負担に当たることなどは,論述の流れにおいては自明のこととして言及を省略しがちになると思われるが,そのような答案は上記のような姿勢が示されているとはいえず,高い評価にはつながらない。

 逆に,短い論述であっても,根拠条文を逐一摘示し,要件を落とすことなく着実に当てはめを行っている答案は,一応の水準に達しているものと評価され,出題意図を大きく外した答案にはならないものと思われる。

 

 第2問は,株式会社が再生手続開始の決定を受けた場合の具体的事例を基に,結婚披露宴に関する役務の提供を受ける権利の届出方法等について(設問1),再生計画案の可決に当たって虚偽の債権届出がされたとの事例において,再生計画の取消事由の有無及びこれがあるとした場合に裁判所の判断に裁量 があることについて(設問2),再生計画に基づく弁済を継続していくことができなくなった場合における裁判所の採るべき方策について(設問3)の理解を問うものである。

採点の主眼は,全体を通して,再生手続における基本的概念や手続的事項について正確に理解できているかどうか,関係条文の的確な指摘ができているかどうかを確認するとともに,設問2については,問題文から出題意図を的確に捉えた上で,関係条文の解釈を展開しつつ,設問において与えられた事実関係を踏まえ,反対の結論にも目を向けながら,自らの考えを論じることができているかどうかに置かれている。

 

 条文の文言についての 解釈を示す場合は,その論拠として,文理,立法趣旨,沿革,条文相互の論理的な関係,判例等を指摘することになるが,常に全てを持ち出す必要はないものの,少なくとも一つは指摘する必要がある。

法令が人の行為について規律している場合は,一般論として,客観的な行為,行為者の主観的態様,結果の発生,行為と結果との因果関係といった点が要件となることが多いことから,そのような視点をもって,条文の文言を分析することが有用である。

加えて,実務上,法令の解釈適用に当たって,手続的正義と経済合理性とが相克する局面は頻繁に生じるものであり,これらは結論を導く際の対立軸となり得るものである。

 

 

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